フォト

-天気予報コム-
2013年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

最近のトラックバック

友人のページ

こんなページを見つけました。

無料ブログはココログ

« 「母校」と呼ぶのは妙な感じだけれど | トップページ | ピアノ・デュオの至福 »

2006年5月28日 (日)

ふと思い出すこと

昨日の大会では、作曲家の早川和子さんにお会いした。茨城大での作曲の授業実践報告は、パワーに溢れていて面白かったし、とても参考になった。

ところで、早川さんの作品の多くは、漢字一字でタイトルがつけられている。「汎 」「彷」「魄」「漣」といった具合。
そのことで思い出すのは、やはり漢字一字を、多くの作品のタイトルとしたある作家のことだ。

綱淵謙錠さん。「つなぶちけんじょう」と読む。若い人は知らないかもしれないけれど、歴史小説の作家で、たくさんの著書がある。「乱」「極」「苔」「濤」などなど。昭和55(1980)年、日本舞踊家の花柳昌三郎さんから、綱淵さんの「斬」という小説を脚色して舞踊作品を作りたいので音楽を書いてほしいと言われ時、私はお気楽な大学院生だった。「斬」は昭和47(1972)年の直木賞受賞作。ちなみに、この年の直木賞は井上ひさしさんと綱淵さんの二人受賞だった。

直接お会いして言われたのか伝言が伝わってきたのか記憶がない。「『斬の歌』があるんですよ」ということだった。歌があると聞けば、そのような歌が古くから伝わっているように思ってしまうけれども、要するに綱淵さん自身が「『斬の歌』を作った」のである。音楽作りの参考になれば・・・ということで、教えていただくことになった。当時私は、杉並区の環状道路沿いの4階に住んでいた。車の騒音と排気ガスで、とても長く窓を開けてはいられないような部屋だったが、それだけに、ピアノを弾いて音を出すことも、周りからは大目に見てもらえた。その部屋へ、綱淵さんが来てくださったのだ。直木賞作家をわが部屋に迎え入れたのは、それが最初で最後である。歌を聴かせていただき録音するためには、喫茶店でというわけにはいかなかったのだろう。

とても穏やかで優しい方だったという印象がある。編集者としての経験が長く、直木賞受賞で世に出たのは47歳、遅咲きの大輪という趣きである。自ら歌ってくださった「斬の歌」がどのようなものだったか、残念ながらまったく記憶がない。確か手元の機械で録音したはずだから、テープがどこかにあるかも知れないがわからない。なごやかにいろいろお話した印象があるのだけれど、26歳の私は一体何をお話しできたのだろう・・・。綱淵さんは私のことを、若い音楽家として敬意を払って接してくださった。「お若いのに、こんな立派なお住まいでちゃんとやっておられて立派です」という意味のことを言われたことだけははっきり覚えている。「立派なお住まい」とは、お世辞でも皮肉でもなかった。お世辞や皮肉を言うようなお人柄ではなかった。私は、さぞや意味不明のことをモゴモゴと答えていたことだろう。ちゃんとなんてとんでもない、大学は出ましたけれどこの先どうなるかわからない身の上、作曲はやっていますけれど一人立ちなんて出来ていません、この住まいだって生活だって未だに親がかりです・・・とは、ついに言えなかった。

作曲するのは楽しかった。将来のことは考えなかった。何とかなると思っていたのだろう。何とかなったのかどうか、判断できないが。
舞踊劇「斬」の公演は、昭和55(1980)年11月、東横劇場で行なわれた。上演時間65分の大きな作品になっていた。評判は悪くなかったと思うのだが再演されることはなく、その後綱淵さんとお目にかかる機会もなかった。

綱淵謙錠さんは、平成8年4月に亡くなられた。

« 「母校」と呼ぶのは妙な感じだけれど | トップページ | ピアノ・デュオの至福 »

コメント

26歳の先生ってどんなだったんでしょうね。今でも作曲を楽しいと感じるんですか?学生の目から見て、先生たちが本当に楽しんでいる姿って少ない気がします。でも、授業でおんなじことを何度も教えなきゃいけないのは、楽しめって言われても無理ですよね~・・・^^;すみません。

どんなだったんでしょう、26歳のわたし。今でも作曲を楽しいと感じるかどうか秘密です。わたしたちの日々は、楽しんでいるよと言い切っても、本当に楽しむようなことなんかないぞと断言しても、どちらも少しずつ嘘になるような気がします。授業で同じことをやるのは、嫌ではないですよ。というより、学生くんたちと遊んでいるときは、楽しくしています。学校の外でだったらもっと楽しいけどね(笑)。それに、他の雑用が多くて、学生くんたちに十分に対応できないのが残念です。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/189419/11877748

この記事へのトラックバック一覧です: ふと思い出すこと:

« 「母校」と呼ぶのは妙な感じだけれど | トップページ | ピアノ・デュオの至福 »