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2006年7月25日 (火)

国立劇場の冒険(1)

現代芸術論第13回(7月20日分)

東京・隼町にある国立劇場は、数々の特筆すべき「冒険」を積み上げてきた。ここでは、雅楽や声明に限って記してみる。そのためには、まずこの劇場のプロデューサー・木戸敏郎の大いなる功績を辿ることになるだろう。

昭和45(1970)年に初演された黛敏郎作曲による「昭和天平楽」が、国立劇場委嘱による最初の作品となった。現在この記念すべき第1作は、古いLPレコードでしか聴くことができない。残念なことだ。

「昭和天平楽」に続くのが、昭和48(1973)年に書かれた武満徹「秋庭歌」で、この委嘱作品シリーズは、第2作にして歴史的な名作を世に送り出すことになった。6年後の昭和54(1979)年には、「秋庭歌」を第4曲目に置いた「秋庭歌一具」がまとめられ、全6曲、演奏時間1時間近くを要する大曲となる。
「秋庭歌」という曲名は、雅楽本来の抽象性からはずれることなく、なおかつファンタジーを喚起する、実に的を得たタイトルだと思う。そして、そのタイトルから連想されるファンタジーを裏切ることのない美しい音楽である。これほどに、タイトルと内容が補完し合うタイトルは、なかなかあるものではない。
私は、「秋庭歌一具」の演奏者のひとりとして、初演と最初のレコーディングに参加するという得がたい経験をした。当時、この作品に対する演奏者たちの理解は、全体としては決して高かったとは言えず、武満さんも練習に立ち会いながら首をひねる場面が多かったように思う。だが、初演者である東京楽所のメンバーは協力的であったし、この作品が美しいものであることは理解していたから、真剣に取り組んでいたことは間違いない。近年では、芝祐靖氏率いる伶楽舎がこの作品を重要なレパートリーとして磨きあげ、世界各地で演奏し続けている。その演奏は整然としていて見事なものだが、反面、かつての東京楽所による、やや雑な部分がありながらも大らかなたたずまいを漂わせていた演奏を懐かしく思うこともある。

「秋庭歌」は、初演時から好評をもって迎えられたが、すべての委嘱作品がそうだったわけではない。昭和52(1977)年、シュトックハウゼン「LICHT - HIKARI - LIGHT」の初演では、この国ではあまり例を見ないブーイングが鳴り響いた。しかし、プロデューサー・木戸敏郎は、「賛否両論」というよりはほとんどが「否」の包囲の中で、かえって戦闘意欲を燃やしたようだった。例えば、ある舞楽面を指して、あんなふざけた面をつけて舞を舞わせるとはけしからん!というような批評が載る。「ふざけた」デザインに見えたとしても、それは舞楽の伝統的な面のひとつだったのであり、批評者の無知を晒したというわけで、木戸のその後のアグレッシブなプロデュース活動は、柔軟な思考ができなくなり、根拠に乏しい「伝統」を金科玉条のように掲げ依存する知識人たちへの挑戦という面も、大きくなっていく。シュトックハウゼンのこの作品が良い作品であったかどうかはともかくとして、雅楽創作史上、重要で刺激的な出来事であったことは間違いない。シュトックハウゼンは楽箏の弾き方を誤解しており、ハープのように両手で絃を弾くものとしてこのパートを作曲して演奏者を困らせたが、このことは、かつて楽箏も両手で絃を弾いていた時代があったことを思い出させ、現代では雅楽が日本の中ですら異文化であることを思い知らせることになった。

木戸と国立劇場の冒険の二つ目は、古代楽器の復元である。正倉院の御物に含まれる残欠を基に、推理と試行錯誤を繰り返して、箜篌(くご)や倭琴(やまとごと)、方響(ほうきょう)をはじめとする多くの楽器が復元された。そしてそれらの楽器のための新しい作品委嘱が始まった。一柳慧や石井眞木の作品をもって嚆矢とするが、ここでは最も若い世代の作曲家による優れた成果として、寺嶋陸也「大陸・半島・島」(平成10年、1998)を挙げておきたい。題名は、文字通り中国大陸、朝鮮半島、そして島国・日本を象徴し、古代楽器の伝来と隆盛、そして衰退のドラマを見はるかしている。

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