ニャーニャック(ヴィエトナムの雅楽)
ヴィエトナムの古い都・フエに伝えられている雅楽、つまり宮廷音楽「ニャーニャック」の演奏会を聴きに行く。東京・紀尾井小ホール。
「ニャーニャック」は、ユネスコの世界無形文化遺産に認定されているそうだが、このたび「フエ遺跡保存センター宮廷合奏団」が来日して、宮崎と東京とで演奏会を開いた。私の同僚さとてぃ先生は、ずっとこの音楽の研究プロジェクトに関わっておられて、今回も師匠先生とともに解説をされて、それもわかりやすくて良かった。
中国にも「雅楽」(ヤーユエ)があり、韓国にもある(アアク)。日本の雅楽(ガガク)は、中国大陸と朝鮮半島から伝来した音楽・芸能が日本化されたものだ。そして、このヴィエトナムの雅楽「ニャーニャック」は、日本の雅楽と共通したところもあれば、まるで違うところも多くて興味深い。
「ケン」というダブルリード楽器の仲間は日本では篳篥だが、雅楽での篳篥のフレーズは決して長くないのに対して、ニャーニャックでは音を延々と延ばす。吹き口に円盤のようなものがあるので口元が見えなかったのだけれど、あれは循環呼吸でもしているのかしら・・・。
儀礼で用いられる「大楽」と、宴などで演奏される「小楽」という二つのレパートリーがあるということで、使う楽器も音楽の性格もずいぶん違っている。「大楽」はダイナミックだし、「小楽」は華やかでありながら繊細な響きがする。珍しい一弦琴の独奏や、フエ歌謡も紹介された。うっとりするような美しい歌だ。
中国的に聴こえないこともないけれど、響きはずっとソフトで、同時にずいぶんリズミックな曲も多い。とても美しく、楽しめる音楽である。それにしても、このような音楽を奏で伝える人たちは、本質的に平和を愛する国民に違いない。はっきりした根拠を示すことはできなくて、直感で言うだけなのだが、音楽の向いている方向が決して好戦的ではないのだ。終結後30年以上経っても、未だ評価の定まっていないヴィエトナム戦争のことを少し思い出しながら、そう思った。
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きっきぃせんせ、ブログでのご紹介ありがとうございます。ケンは、推察の通り循環呼吸で演奏しています。上の写真(小楽)なので写ってないのが残念。実は楽団員の方が、売り物として、ケンとダンニ(胡弓)を持ってきていました。両方買っちゃおうかな・・・とも思ったのですが、他のスタッフで上手に音を出せる方がいたので、ケンはその方がお買いあげになりました。私はしばらくベトベト病に罹っていると思いますので、みなさまお気をつけあれ。
投稿: さとT | 2006年11月22日 (水) 00時33分
さとてぃせんせ、お疲れさまでした。あぁ・・・やはり循環呼吸だったのですね。音が途切れないわけだ。ベトベト病って・・・(笑)。
投稿: きっきぃ | 2006年11月22日 (水) 23時41分