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2007年5月 7日 (月)

「裸婦の中の裸婦」

澁澤龍彦、巌谷國士著、4月に河出文庫版が発売されたばかり。

「裸婦の中の裸婦」というタイトル、ちょっとわかりにくいけれど、「~の中の~」とは「男の中の男」のような用法、つまり、数ある裸婦像の中でも特別に選りすぐった裸婦像というような意味で使われている。

1986年3月から1年間の予定で、「文藝春秋」誌に、澁澤自身が選んだ絵画・写真・彫刻など(もちろんすべて裸婦像)12点について自由なエッセイを綴るという連載が始まった。

しかしその年の秋、病魔に襲われたため、最後の3回分の執筆者に巌谷氏が指名された。翌87年8月に澁澤氏は死去し、この本は最晩年の仕事のひとつとして遺された。

文章は、架空の二人の人物の対話形式を取る(澁澤+巌谷の対談ではない)。総合誌への連載という配慮もあったのだろうが、著者自身とその分身と思われる対話体は読みやすく、美術作品を要領よく解読するのに大変有効である。晦渋な言い回しなど、ここにはまったくない。

12点の作品には、絵画の他に写真や大理石彫刻、人形が含まれる。各章につけられたタイトルは、いかにも澁澤好みのものだ。「幼虫としての女」(バルチュス)、「うしろ向きの女」(ベラスケス)、「デカダンな女」(ヘルムート・ニュートン)、「両性具有の女」(ヘレニズム時代の大理石彫刻)、「夢の中の女」(デルヴォー)、「美少年としての女」(四谷シモン)などなど。

最後の3回を引き継いだ巌谷氏が、亡き年上の友人に対する敬意に満ちた「あとがき」を書いていて、心に響く。

巌谷氏の文を引きながらこの本の要点をまとめるとするならば、「旧来の美術史にとらわれず、しかもそのポイントをはずすこともなく」「気ままに、気楽に」「遊び半分でいながらたいていは何か本質なことにとどいているような精妙な語り口」なのである。

あぁ、それは何と素敵なことなのだろう!大学で音楽を紹介するような授業もやっているけれど、「旧来の」音楽的価値観から自由になって、自分が最も薦めたいものだけを自信を持って選び、「気ままに、気楽に、遊び半分でいながら、何か本質的なことに届くように」語るのは何と難しいことか!

その気になれば1日で読めてしまう本だ。だが、著者が至ったこの密度の濃い軽みには、誰でもが容易にたどり着けるものではない。物事を啓蒙的に伝えるという行為の理想的な境地が、ここにはあるのではないだろうか。

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コメント

最近、仕事柄新聞各社を朝にチェックするのですが、
結構この本の紹介がされていますね。
先生もオススメなのであれば、私も読んでみようかしら??

最近発売された本だから、取り上げられることが多いのかも知れませんね。
澁澤龍彦の代表作とはいえないだろうなと思います。でも、本文で書いたような理由で紹介しておきたいと思ったのでした。重い内容の本ではないので、気楽に読めると思います。

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