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2007年6月18日 (月)

映像のショスタコーヴィチ

現代芸術論第8回(6月12日分

音楽記録映画「ショスタコーヴィチ」を観る。ずいぶん昔に市販されていたVHSテープで、1967年ソ連「中央科学映画」製作、A. ゲンデルシテイン監督。DVD化されている様子はないようだ。

この映像は、いわゆる「冷戦」の時代に作られた。そういった社会的背景を背負っているためだろうが、久しぶりに見直してみると、「偉大な国民的作曲家ショスタコーヴィチ」の仕事に焦点を当てたソ連の国策的映画という感は残る。

第7交響曲を作曲しているショスタコーヴィチの部屋の外では、第二次世界大戦空襲のすさまじい爆撃音がしている。戦争にひるむことなく作曲を続けたと訴えたいのだろうけれど、現実にはあり得ないシーンだ。

「ショスタコーヴィチの証言」という本が1980年に出た時には大きな話題になったし、読んでみると驚くことがいっぱいで、とても面白かったのだが、現在ではこれはほぼ偽書であるということになったらしい。しかし、内容のすべてがデタラメというわけでもないように思う。ショスタコーヴィチの交響曲が身にまとっている悲劇性は、作曲者自身の言葉を待たずとも、戦争のみならずスターリン独裁政権下の恐怖と無縁だとは言えないだろう。

ソ連共産党第一書記フルシチョフによるスターリン批判が発表されたのは1956年。この映画は、それからさらに11年が経ってから作られているわけだが、ショスタコーヴィチとスターリンとの暗闘について、映画ではほとんど何も語られない。あるいはショスタコーヴィチ本人が、口をつぐんでいたからかも知れない。しかし、第8交響曲第3楽章から第4楽章にかけての緊迫した音楽が、ショスタコーヴィチが心臓疾患で運ばれることを象徴する救急車の映像に重ねられるのは、作曲者としては苦々しい思いだったに違いない。そんな映像のために書いた音楽ではないからである。ちなみに、この映画が作られた時は、ショスタコーヴィチはまだ存命中だった。

そんなわけで、記録としてショスタコーヴィチを正しく捉えているかという点ではやや疑問が残るのだが、それにも関わらずこの映像が一見に価すると思うのは、当時のソ連の最高の音楽家たちの演奏風景をも、同時に観ることができるからだ。ムラヴィンスキー、コーガン、リヒテル、ロストロポーヴィチ、ヴィシネフスカヤ、オイストラフ・・・。そして、何よりもショスタコーヴィチ自身の姿がたくさん映っているのが大変貴重である。

近年、「ショスタコーヴィチの反抗 戦争交響曲」というDVDが発売された(ラリー・ワインスティーン監督)。ゲルギエフが音楽監修の立場で、ロッテルダム・フィルを指揮するだけでなくインタビュー出演もしている。こちらは、ショスタコーヴィチとスターリンとの暗闘、ショスタコーヴィチの音楽に戦争が落とした影を描いている。当然ながら画質も音質も良い。歴史的解釈も新しいものかも知れないが、「証言」に寄り添うような内容になっているのが少し気になる。思わず目をそむけてしまう実写映像も含まれている。そして、テーマを限っているために、扱われる音楽も交響曲の第4番から第9番までが中心となっている。ソ連の巨匠たち総動員で、協奏曲や室内楽や映画音楽も聴こえてくる67年版VHSの方が、音楽的には多様だ。さらにDVDの方は、ショスタコーヴィチ自身の映像がとても少ない。

67年版VHSと90年代DVDのどちらも、隔靴掻痒の感は残る。一人の作曲家の人生がたかだか2時間の映像におさめられてたまるかということはともかくとしても、ショスタコーヴィチという作曲家が生きた時代の特殊性が、彼に独特の複雑さを背負わせているためでもあるだろう。

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