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2008年7月 5日 (土)

「上り坂コンサート」

14歳は「少年」だろうか。「少年」と「子ども」とは同義語だろうか。

もちろん、世間一般的にはそうに違いない。しかし、「少年」という言い方と「子ども」という言い方の間には、大きな距離が生じる場合もある。

郷古廉(ごうこすなお)くんのことは、ここにも一度書いたことがある(2006年4月7日)。ユーディ・メニューイン青少年国際ヴァイオリンコンクール・ジュニア部門第1位を受賞した直後のことだ。あれから2年、今日は、神奈川フィルとの共演の舞台に登場した。

「上り坂コンサート」を聴きに行く。今まさに「上り坂」にある若々しい演奏者を紹介するシリーズで、これが第8回目。紅葉坂を登りきったところにある神奈川県立音楽堂が会場ですよという意味も掛けているようだ。指揮は井上道義氏。

プレトークでは井上氏が軽妙に、というよりは軽薄すれすれに、もちろんそれは井上流のサービス精神であるわけだが、今日のソリスト郷古くんに切り込む。郷古くんは、それに対して実に率直に誠実に答えている。1682年製のストラディヴァリウスは、「いい音を出したがっているように感じます。」とは、何て堂々とした答えだろう。サッカーに「心奪われた時期もありました。」という話などは、普通の男の子らしくて、かえってホッとする。

はじめの曲、ビゼー「子どもの遊び」でも、演奏はプレトークの軽妙な雰囲気を引き継いだが、郷古くんがラロ「スペイン交響曲」のソロを弾き始めた数小節で、その場の雰囲気は一変した。14歳の「少年」が、ステージを「真剣勝負」の場に変えてしまったのだ。

こんな演奏を聴いたことがない。何度も鳥肌が立った。目頭が熱くなりそうな瞬間さえもあった。今までに数知れず聴いてきた「スペイン交響曲」でこんなことが起きるなんて・・・。演奏の集中は一瞬たりとも途切れなかった。そして、大きく沸き起こった拍手は、簡単には鳴り止まなかった。

郷古くんは、友人であるヴァイオリニスト・勅使河原真実さんのお弟子さんだ。頭角を現してからは、辰巳明子、ジャン・ジャック・カントロフ、ゲルハルト・ボッセ、パヴェル・ヴェルニコフといった先生たちの指導を受けてきた。テクニックということだけでいえば、もしかしたら世界には、同じように優れた少年・少女ヴァイオリニストがいるかも知れない。しかし、音楽のふくよかさというか、取って付けたのではない表情の自然さ、的確さは、他の追随を許さないのではないか。さらに特筆すべきは、その音の美しさ、上品さだ。「スペイン交響曲」という曲は、表情の「揺れ動き」が自然で的確でなければ、そして品格を高く持たなければ、わざとらしい、鼻持ちならないものになってしまう。

どうしてこんなに「味のある」演奏をできるのだろう・・・と思いながら、しかし、特に緩徐楽章などでは師の歌い方が反映されているのを見つけて嬉しくなった。先生の才能を、大きな才能ある人が受け取るとこうなるのだ。この選曲は彼自身によるものだそうだけれど、今一番自分に合っている作品を判断できるのも、優れた能力のひとつだろう。

郷古くんの音楽は、「年齢のわりに大人びている」とかいうものではない。彼が今までにしっかりと身につけてきた等身大のものだ。彼はまだ「少年」かも知れないが、「子ども」ではない。身につけたものを表現できる「少年」とは、何と恐ろしく美しい可能性を持った存在だろう。

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