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2008年9月14日 (日)

オペラ「そしてみんなうそをついた」

オペラシアターこんにゃく座公演を観る。林光さんの新作。東京・六本木、俳優座劇場。

タイトルは、原作である芥川龍之介「藪の中」の内容を象徴するもの。原作では、登場人物である「木樵り」、「旅法師」、「放免」、「媼」、「多襄丸」、「女(真砂)」、そして「金沢の武弘の霊」が、藪の中で起こった出来事を語っていくが、それらの証言は少しずつ食い違っていて、結局誰がどのようにして武弘を殺害したのか、わからないようになっている。

作曲者自身による台本は、原作では一人ずつ順番に語られる証言をバラバラにして組み合わせ、モノローグドラマを劇的構造に変換させた。その組み立てはとても面白く、ただでさえわかりにくい「事件」の核心が、もっとわからなくなった。

けれども、おそらくは「もっとわからなくなる」ことこそ、台本作者・作曲の狙いであって、ひとつの「真実」が存在するかのように見えて、実は何が「真実」かわからないという話を用いながら、「真実はひとつである」という公式など、人間の営みにおいてはそれこそ「真実」ではなく、そもそも「『真実』とは何か。どこかに必ず存在するひとつのものなのか」と問いかけてくる。もとより、武弘殺しの犯人探しはオペラ化の目的ではない。

「こちらの調査結果こそが『真実』である。」と主張し合うのは、非常によくあることだ。例えば、戦争の後始末に失敗したこの国は、今でも近隣諸国から、教科書に載っている「真実」の正当性について異議を出され、そのたびに関係がぎくしゃくする。「みんなうそをついた」かどうか、それすら不明な事象が人間社会にはあるのだということのみが、本当の「真実」なのかも知れない。

最近の林作品の音楽書法の簡潔さについては、すでに一つの様式が確立されているようにさえ見える。歌のパートに対して楽器パートは、背景ではあっても伴奏であることはほとんどない。歌パートは楽器に対して優位ではなく、それぞれの楽器も、歌パートと同価値のひとつの声部としてアンサンブルを成す。言い方を換えれば、歌パートもアンサンブルの声部のひとつに過ぎない。

楽器は、クラリネット、ヴァイオリンに太棹三味線、打楽器、ピアノが加わる。どの楽器も(ピアノですら)、声部を成す線の1本として機能させる部分が多い。それだけに時折鳴る不協和音のインパクトは強く、全体に音の数は多くないだろうと思われるが、音楽はとても雄弁だ。

演出は、座の中心的な歌役者である大石哲史さん。京都生まれである彼の出自が、歌われる詞のイントネーションも含めて、作品の地理的背景を的確に押さえることに役立っている。

原作が求める登場人物の他に、二人の「添乗員風の女」と二人の推理者(?野次馬?)が登場して、音楽を中断させ、証言に注釈を加えたり、疑問を発したりして、「真実」がますますわからなくなることに貢献する。ただ、その登場頻度が多いので、そのたびに音楽の流れも私たちの思考通路も寸断される。そして、かえって説明的になってしまう憾みも感じる。これらの付加的人物を割愛すると、作品全体の表現力がどれほど落ちてしまうものなのか、いつか音楽だけ通して聴いてみたい気がした。

それはともかく、「放免」に扮する富やんの風貌は、すごいハマり方だったなぁ。こんなに迫力ある坊主頭はなかなかないだろう。彼の主演で「薮原検校」を観てみたいものだ。

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コメント

あ〜っ…、日記読んだらそのオペラ観たくなりました(>_<)
最近、きっきぃ先生や林先生の舞台作品を観たい症候群です(謎

私は歌で世界を構築しますが、詩人の友人曰く、詩人は世界を破壊する、のだそうです。常識という枠を持たない、という感じでしょうか。
脱線していますが、様々な世界の人と交流したい最近です☆

>萌さん

詩がまさにそうですが、音楽や美術、演劇や映画も、その他芸術はみな、「世界を破壊し、再構築する」力を持っていると思います。「破壊」というと、乱暴なイメージですが、「世界を、今までに誰も見たことのない目で見て、新しいものを発見する」と言い換えても良いかも知れませんね。

なるほど…。

私の活動で言えば、歌を通して新しい世界を体験してもらう、という感じでしょうか…。

どこか懐かしい感じ、ジブリっぽいという評価をいただく最近です。
奇をてらわないからでしょうか。
私は内側から沸き上がる世界を「歌」という姿で描いていますが、小学生が聴き入ってくれたことに感動しました。

>萌さん

そう、まさに「歌を通して新しい世界を体験してもらう」のが、萌さんにとっての「破壊と創造」ですね。
小学生が聴き入ってくれるなんて、最高じゃないですか!これからも、たくさん歌っていってくださいね。
楽しみにしています。

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