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2009年8月

2009年8月13日 (木)

罵倒指南

昨年から、友人の舞台演出家Mさんに、「ことばと表現」という授業の集中講義をお願いしている。

詩やエッセイ、戯曲などを声に出して読むワークショップを通じて、人の前で話すこと、声に出して表現することへのハードルを低くしてもらいたいという思いが、こちらにはある。今年も、Mさんが用意してくれた小説、戯曲などを読んでいく。

とりたてて珍しいことではないが、若い世代に通じないことばがある。

「赤チンの午后」。ねじめ正一の掌編小説。「赤チン」がわからない。たしかに、最近赤チンつけないよなぁ・・・と言ったら、Mさんは「もう赤チン売ってないでしょう。昔はどんなケガでも赤チンだったけど。」と答える。そうそう・・・、転んで擦りむくとすぐに赤チンだった。ちなみに、Mさんと私は、同世代である。ついでに、「午后」も読めなかったそうだ。「后」の字に馴染みがないのだ。

別の作品。

「おたんちん」、「くたばり損ない」、「横着」が通じない。「おたんちんって何ですか?」と聞かれて困った・・・とMさんは苦笑い。モリエールが集めた中世の笑い、鈴木力衛の名訳によるドタバタ喜劇も、脚注だらけになってしまう。

どうも「罵倒」することばに通じないものが多いような気がしてきた。「おたんちん」も「くたばり損ない」も、面と向かって意味を問われると困る。「死に損ない」って言ったって、本当に死にかけたわけではないのだ。

少し前に読んだ本に、見事な「罵倒」の場面がある。面白かったから、書き留めておこう。

・・・烈火のごとき怒りとはまさにこのことで、声はうちふるえ、舌はもつれ、両目からは火花を発した彼は、こうわめいたのである。

「おお、悪辣などん百姓、性悪な不作法者、口のきき方を知らぬ虚(うつ)け者、傲岸不遜な恥知らず、中傷好きの陰口屋!よくも拙者の面前で、またこれらの高貴な御婦人方の面前で、そのような下劣な言葉を吐きおったな!よくもまあ、おぬしのどんよりと濁った頭でそのように不埒な、はしたないことを考え出したものよ!さあ、拙者の前から消えうせろ、このできそこないの怪物、嘘の貯蔵庫、いかさまの保管箱、悪意の土蔵、恥辱の創作者、醜聞の触れ役、貴人に対する礼儀の仇敵め!消えうせて、二度と拙者の前に姿を現すな、現われれば拙者の逆鱗にふれるものと覚悟いたせ!」

「傲岸不遜」とか「下劣」とか「不埒」とか、日本語の「罵倒語」は実に豊かで面白いと思いません?ちなみに、ここで「烈火のごとく」怒っているのは、ドン・キホーテ氏なのであります。(牛島信明訳、岩波文庫、前篇(三))

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